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おとなの(?)読書感想文。 絵本から児童書、時代モノ、how to本、ミステリーetc...。あなたの道標になったら幸いです。
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文庫本って。
本屋で新刊として、表紙を上に横積みされているときはいいけれど、図書館に整然と並んでいる中から選ぶ場合、当たり外れが多かったりしませんか。形も装丁も一緒で、違うのは当然ながら“タイトル”と“本の厚さ”。その中から1冊選ぶのはちょっとしたゲーム的な感覚です。面白いと「勝ったー!!」とか思っちゃいます。
今日はそんな本・・・他(こちらは手元になく、ちょっとウロ覚え)。
 YA(ヤングアダルト)コーナー、中高生にオススメ!との本棚より。幽霊とか妖怪とか怖い話が大好きで、遊び仲間で『お化け大好きクラブ』を発足させ^^;、その部長たる我が息子に、「次に読ませて!!」と予約が入ってる本です。
(ご期待のように怖くはないんだが…^^;)
…それにしても、YA中高生にオススメ!とか、そういうコーナーってちょっと困る。オバさんは借りにくいじゃーん…。

しゃばけ しゃばけ
畠中 恵

新潮社 2004-03
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↓ちょっとだけネタばれしてます。ご注意。

 廻船問屋であり、薬種問屋でもある長崎屋の若だんな、何かといっては寝込み、死にかけてる方が長い程の病弱者。お稲荷様に願を掛け、やっと授かった子どもでもあり、ふた親からは『大福餅の上に砂糖をてんこ盛りにして、その上に黒蜜をかけた』(本文より)みたいな可愛がられ様。お店の手代らにも甘やかされ世話を焼かれ、感謝しつつも情けない日々です。
そんなひ弱な若だんなですが、ある夜、訳あってお忍びの外出をし、その帰途、殺人事件に遭遇してしまいます。
 江戸の夜はそれこそ漆黒の闇。若だんなの提げた提灯をめがけて下手人が迫り、まさに第2の被害者にならんとするところを、付喪神に助けられ難を逃れます。
・・・さて、さて人外のものに遭遇しても驚かない、この若だんなの周りには妖(あやかし)がいっぱい。屋敷の中を小鬼のような妖、鳴家(やなり)が駆け回り、自室の屏風に住むのは“屏風のぞき”といった具合。表向き店の人間として店の手代を務める佐助、仁吉のふたりも、実は若だんなを守るべく、お稲荷様から遣わされた犬神、白沢といった妖なのです。
若だんなは俗に言うボンボンなのですけれども、横柄なヤツではなく、実に優しく素直な人柄で、時に妖たちとおやつを食べたり、実に楽しげ。妖達も義務感ではなく、若だんなが大好きなので、お役に立ちたいと願っておるようです^^。
 殺人事件からしばらく、薬種問屋の人間を狙った殺人事件が頻発。
狙いはなんなのか?
下手人は誰なのか?
 妖たちのテキトーな捜査^^;、若だんなの出生の秘密も絡み、次第に真相が明らかになっていきます。
 そしてクライマックス(と、言うにはあっさり片が付いた気がしなくもナイけど^^;)!。忠実なる2妖を従えて、ひ弱な若だんなの、“万年、風前の灯火状態”な命を掛けた大捕物へ。

 強い力を持っている…らしい佐助(犬神)、仁吉(白沢)の活躍、見せ場がなさ過ぎたのは、かなり不満でしたが、この『しゃばけ』以後、『ぬしさまへ』『ねこのばば』『おまけのこ』『うそうそ』とシリーズ化されたそうで、妖達の活躍はそっちに期待。

異界から落ち来る者あり〈上〉―大江戸妖怪かわら版
『異界から落ち来る者あり』(上・下)

著:香月 日輪
出版社:理論社
 もひとつ。これまた、YAコーナーからの掘り出し物。
ヒトの世界に居場所の見つけられなかった少年、雀。ある日、仲間にボコボコにされた挙句、どうした弾みか“落ちた”先は・・・。町の形はそのままに、しかしそこで暮すのは妖怪、魑魅魍魎たち。人情(?)に厚い、魔都・大江戸の妖怪たちに助けられて、瓦版屋の記者として立派にひとり立ちするまでの様を、面白おかしく、ちょっと切なく描いております。上下巻セットでお読み下さいませ。


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“手”洗いクマさん加減にはちょっと自信のあった私ですが・・・息子に続いて、今、世間で大流行のウィルス腸炎にヤラれました。吐き気と腹痛と発熱と。ツライものなんですねえ~・・・^^;
おとなしく寝てろよ!ってとこですが、ヘタれ1日目はともかく、2日目はさすがに眠れなくて、本を読み→気持ち悪くなり→しばし休憩→本を読む・・・を繰り返していました。
でも読んでた本のタイトルは『エンド・ゲーム』だったり。

エンド・ゲーム―常野物語 エンド・ゲーム―常野物語
恩田 陸

集英社 2005-12
売り上げランキング : 33343

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本作、『エンド・ゲーム』は、先だってここに書いた『蒲公英草紙』の次の作品に当たり、常野物語シリーズとしては3作目です。予備知識のなく本を手に取った私めは、2作目→3作目→1作目(予約中)という邪道な順番で読むことになりましたが、これを読まれた方は1作目からお読み下さい(今のところ不都合はないように思われますが、1番初めを読んだときにあっ!ってことになるのかもしれませんので)。


↓大味で(?)ネタばれしてます。ご注意ください。

舞台は前作の戦前から、いきなり現代へ。
権力をもたぬこと、一族は寄らず在野に散ること・・・等など、特殊な能力を持つ一族であるが故に、独自の掟に沿って生きる常野の人々。相変わらずその精神は生き続けているのだけれど、平和な一族かと思っていたら(前作の印象)そうでもないんだな、ホントは・・・。
常野一族には“歴史を自らの中にしまうこと”(レコードする?)、“遠目”(未来予知)の他にも、“裏返し”(?なんと表現していいのかわからない)だの、“包む”だの“洗濯屋”だの、様々な能力を持つ者が存在するのですが・・・話の大筋、オセロ・ゲームに例えられる一族間の内部抗争勃発、あるいは激化・・・と、その顛末。
または能力を持つ者の孤独、時代にそぐわない能力をもつ者の苦悩。かなりダークな話です。が、スピード感もあり、面白さは『蒲公英草紙』より上ではないかと思います。
“一族間で交渉を持たない方針の方々”という設定だけに、敵・味方の判断がつかず、一時、何気にスパイ映画っぽくもあり。

次作があるなら、黒の似合うちょっと素敵な(←個人的な意見)“洗濯屋”、火浦氏がまた登場してほしいな、と願う私でありました^^。

蒲公英草紙

著:恩田 陸
出版社:集英社



A.「書けませんでした~^^;」

さて、今日、ご紹介するのは『蒲公英草紙』。
『たんぽぽそうし』。
6番目の小夜子』以来、恩田陸さんは読んでいなかった私(『・・・小夜子』はドラマの方が良く出来てた)。
また、読もうかという気になったのは、女流作家10名の手によるアンソロジー、『怪談集 花月夜綺譚』に寄せていた一遍を読んでから。図書館でたまたま手に取った1冊がこれです。

開戦間際・・・限りなく不穏で、きな臭い匂いが其処ここで漂い始めた時代。
医家の娘である峰子は、旧家、槙村家の虚弱なお嬢様・聡子の話し相手、遊び相手に任ぜられる。
甘え放題に育てられたのに、聡子は我が侭でもなければ、神経質でもない。それどころか、思慮深く、優しく、女神のように美しい。

峰子が度々、訪れるお屋敷には、途切れることなく大勢のお客様の姿があるのだが、あるとき、不思議な家族が訪れた。ある目的を携えて。それは然るべきときがくるまで、多分、当事者たる彼らにもわからないのだけれども・・・。
流浪の民として、方々を流れながら人々の魂を受け止め、記憶する彼らは“常野一族”と呼ばれる。彼どのような使命を帯びて現れたのか・・・?

歴史を語り、また探求することに情熱を傾ける人々は“常野”一族なのかもしれないな、なんて、ふと、夢想。

読み通してから、実はこの本作、不思議な一族、“常野”について描かれた、何番目かのお話だということが、判明^^;。・・・と、言って、特に読み進めるのに困った点はなかったデス。

怪談集 花月夜綺譚

著:恩田 陸
出版社:ホーム社



女流作家10人の競演。
妖しく、美しく、そして恐ろしい物語集。

『水葬園』、『紅差し太夫』が印象に残りました。

家の窓には時折、ヤモリが訪れます。
常夜灯に集まる虫を狙ってくるものらしいです。
最初は気持ち悪かったのですが、何度も遭遇するうち、親しみが湧いてきました^^。
(冬場、大丈夫なんでしょうかねえ・・・)

さて、今日、ご紹介するのは『家守綺譚』。“やもりきたん”と思っていました。
ホントは“いえもりきたん”と読ませるのでした。
怖い話ではありませんで、素敵な余韻が残る本です^^。

家守綺譚

著:梨木 香歩
出版社:新潮社



登場人物は同じくして、短編。
タイトルにつけられた草木、花を思いながら、少しずつ、読みたい本。
ひとつ読めばかなりお腹がいっぱいになるはずだから。
梨木さんの作品は、既刊は多分全て読んだと思うのだけれど、
私の中ではこの作品が一等、素晴らしい、と思っている。

以下、ネタばれ ご注意。

駆け出しの物書きである綿貫征四郎は、家を守る役目を任されている。古い家屋と庭木の数々、邸内には山裾の湖から疎水が引き込まれ、時として縁側で鮎の群れが見られる、そんな風雅な家。 
実はこの家、湖にボートを漕ぎ出したまま行方知れずになった学友、高堂の実家であり、依頼主は高堂の老いた父親である。

雨がひどく降る晩、邸を任された綿貫のもとに高堂が訪れる。床の間の掛け軸のサギが魚を狙う湖の端から、昔のままの姿でボートをつける。


綿貫「どうした 高堂。 逝ってしまったのではなかったのか」


高堂「なに、雨に紛れて漕いできたのだ」


尋常でない…のだけれども、旧知の間柄であったら、私もそうした反応かもしれない。
(ちなみに、この本の中では、高堂に対して、“幽霊”といった表現は一切使われていない)
だけれども、この家で日々、起こることはかなりオカシイ。
例えば作中、「池の端になにやら、置いてある風情…近づくと布のようでもなし、皮のようでもなし・・・てろてろ光っている」について。
綿貫が気味悪く、不審がるのを「河童の抜け殻にきまっています」と言いきる、隣家のおかみさん(万事がこの調子)、やたら聡い…ヒト臭い犬、ゴローの助けで、世界は均衡を保っている。

本のページを繰るなか、ふと、倉橋由美子さんの著作、中でも『幻想絵画館』を思い出した。

『家守綺譚』では、高堂が(大概の場合は)掛け軸の絵の湖を経てこちらへ渡ってくる。
『幻想絵画館』では、こちらが絵の中へ、あちらの側に入り込むという趣向だが、似た味わい、感触がある。

この世でなく、しかしあの世でもなし。
どちらも“あわい”、もしくは“狭間”の世界の話、なんだと思う。

幻想絵画館

著:倉橋 由美子
出版社:文藝春秋

 

かつてデザイン学校生だった頃、出会った倉橋さんの最初の作品です。
20の絵画に20のお話・・・その世界にみせらトリップさせられます。
ナビゲーターは倉橋さんの他の作品にも登場する、老成している・・・というか、知的に過ぎる少年、彗君。

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